『system, signal, nimbus』解説

このページは、以下の画像の謎解きsystem, signal, nimbusの解説記事です。
解読おめでとうございます & 遊んでいただきありがとうございました。以下、作者側の想定解法による解説、小ネタなどを記載していきます。

解説

便宜上、復号された文字を太字で表記します。

①図を解釈する

問題の図の左半分は、一番上の「8」という数字の下に8つの下位要素があり、上から3つめの下位要素である四角には更に下位要素が2つある……という階層構造が示されている。この図は単体では解読できないため、この構造に対応する他の何かを思い付いて紐付けないことには解けないだろうと考える。

図の右半分では、上から3つめと6つめの四角を足し算し、その答えで問題文らしき文章の空欄を埋めることが示唆されている。

図の中で使われている文字は0~9までの数字とA~Fまでのローマ字であることが分かる。

図の左端の部分で「5」が横倒しにされていることや、図中に左右反転した「8」があることから、復号された文字を更に回転・反転させることがありそうだと分かる。また、これらのことから右側中央の半月のような形の記号は「D」の反転したものだろうと考えられる。

②太陽系の構造と対応させる

8つの要素が「8」に属しており、各要素もおそらく何らかの序列に従っている、といったところから、太陽系の構造と対応しているのではないかと考える。

とすれば、暗号化された文字である「8」は復号すれば「SUN」となることが分かる。この「8」が反転している部分では復号された文字列も反転して「NUS」とするのではないか、と考えると、(太陽系の惑星の序列より)上から2つめおよび7つめが「VENUS」「URANUS」であるため復号の方針が確定し、かつ他の文字の復号も進展する(この過程は省略)。

③地球の下位要素を考える

地球の下位要素、つまり衛星として図の枝には2つの要素が示されているため、月以外の何かを考える必要がある。

他の惑星の名前を復号していくと、「6AA5」が月(「MOON」)に対応することが分かる。

もう一つの「D(反転)」については、地球を周回するもので、かつ簡単なローマ字の文字列で記せるもの、と考えると、ISS(国際宇宙ステーション)が思い浮かぶ。よって「D」=「SSI」と分かる。

④ハビタブルゾーンから「7=H」を復号する

図の左端の謎の「75(5は横倒し)」について、「5」=「」であることから「◯Z」であると推測する

「75」の領域が地球に被っていることからハビタブルゾーンを想起し、その略である「HZ」から「7」=「」を導く。

ただし、ここでハビタブルゾーンが分からなくても後述する問題文の復号の過程で同様に「7」が用いられているため、問題文の文脈から推測できなくもない。

⑤暗号の対応表を作る

この後、問題文の解読や四角(地球と土星)の暗号化の際に役立つので作っておく。

0: 4: 8:SUN C:
1: 5: 9: D:SSI
2: 6: A: E:
3:UR 7: B: F:

⑥地球と土星を暗号化して16進数として加算する

暗号の対応表から、「EARTH」=「E0B27」、「SATURN」=「10235」と分かる。

暗号に使われている数字と文字が16進数に用いられるものと一致することから、図中の+記号は「16進数で加算」を意味するものと解釈し、「E0B27」と「10235」を足して「F0D5C」を得る。

⑦問題文を復号し、答えを調べる

図の右側の暗号文に先ほど得た16進数の足し算の結果を補った問題文「97E5 901 F0D5C 6CDA5 A4EB?」を復号し、「WHEN WAS CASSINI MISSION OVER?」を得る

問題のテーマが宇宙であること、地球と土星の名を暗号化したもの同士の和がカッシーニとなったことから、問題文を「探査機カッシーニのミッションが終了したのはいつか?」と解釈し、ネット等で調べて日付を得る。

これで「20170915」という答えが得られる。


反省

  • 間接的にでももう少し太陽系を想起させるヒントを置いたほうがよかった
    • 宇宙に興味ない人からすると太陽系を思い付くのは厳しかったかも
    • 冥王星が準惑星になったことを知らないか、太陽系の惑星は8つであるという知識に馴染みない年代の人も厳しかったかも
  • 月とISSの順番が逆
    • 太陽と各惑星の対応がそうであるように、より遠くを周回するものがより下に描かれているというルールを遵守すれば、ISSは月よりも上に来るはず
    • 月のほうが思い至るのが早いだろうと思ってなんとなく上にしちゃった
    • 反転した「D」を月だと誤解してくれないかなという謎の期待もあった
  • ハビタブルゾーンは易しくないのでは
    • 問題文を構成するために「H」が必要だったが、惑星などから供給できなかったので仕方なくハビタブルゾーン(HZ)を採用することに
    • しかし横倒しになった「5」を使ったことで「そういう操作もあるのか」と思ってもらえた可能性はある
  • 16進数の足し算が簡単すぎ
    • 繰り上がりが必要な計算にして難しくしようとしたけど面倒になったので断念
  • 暗号化できない文字を放置してしまった
    • 水星、木星、海王星の名前の文字で他に利用できない文字を空欄にしたが、意図しないミスリードを誘った可能性がある
  • 暗号の対応関係は1文字対1文字にすべき
    • それはそうなんだがSUNとかISSとかの発想が思い浮かんでしまったので試さずにはおれなかった
    • ただし「D=SSI」に関しては、それぞれに対応する暗号が存在するのでいわば一意暗号化不可能?な符号になってしまっておりその道の人から文句を言われそう(復号は一意なので解読するぶんには問題ないと思うけど)
  • カッシーニが突飛すぎる
    • 太陽系の暗号を解いて問題文を復号したと思ったら急に一探査機のことを調べさせられるので突飛に感じられる気がする、もう一段階挟んでからカッシーニに辿り着かせたかった
    • 暗号化された状態とはいえ非常に直接的に問いを投げかける文章を記述してしまった
    • いちおう地球と土星を足したらカッシーニが出てくるという仕掛けは施せたのでそこで許してもらいたい

裏話

タイトルについて

作問時および企画応募時にはタイトルはなく、実際に採用されて掲載されたときも出題番号が割り振られただけなので、タイトルは本記事を編集している時に考えました。

完全に独り善がりのタイトルにすると、解く人がタイトルをヒントだと思ったときにミスリードしてしまうと思い、ある程度はヒントとしても機能するように……と考えた結果このようになりました。

「system」はそのまんま「系」ということで、太陽系(Solar System)につながるように入れました。「signal」と「nimbus」は本編というよりは後述するインスピレーション元からの引用です。

一応「signal」は、出題者から回答者への暗号送信、あるいはテーマとなっているカッシーニという探査機との連想もできなくはないですが、「nimbus」(雨雲、後光、光背)はかなり恣意的かと思います(混乱させていたらすみません)。

手書きについて

「8」を左右反転させたときに形状が異なるようにする必要があり、かつ作品が営利企業により使用されるという前提があったため、自由に使えるフォントの中から条件に合うものを選ぶよりは手早く手書きでやってしまおうということで書きました。使用ソフトはWindows標準の「ペイント」で、使用デバイスはマウスです。

インスピレーション元について

当時(昨年夏ごろ)聴いていた音楽に探査機カッシーニをテーマにしたものがあり、制作者である____naturalさんはカッシーニの最期に感銘を受けて同曲を作ったとのことで、楽曲自体の良さもさることながらそうした「何かに強く突き動かされて創作した」という背景に心を打たれ鬼リピしていました。そんな状況で謎解き募集の案内を見て、じっくり作問する時間もあったので、以前から抱いていた暗号解読要素のある謎解き制作への興味とカッシーニというテーマが合わさって、このような問題ができました。

タイトルの「signal」「nimbus」はいずれも同楽曲内に登場する単語です。